布施

お釈迦様は人を良い方向へと導いてくれるものとして、布施を

お勧めになりました。今日では、法事の時お寺に納めるもの、

そのような意味になっていますが、元はもっと広く「遍く施す」の

意味になります。喜捨、利他行とも呼ばれ、日常の言葉ですと

思いやりの気持ちを形に表していく、そう言い換えることもできます。

インドの元の言葉でダーナと呼ばれ、旦那さん、檀家さんの

もとの言葉になっています。

また、臓器移植のドナーもダーナからきているそうです。

布施には形のあるものを施す布施と、形のないものを施す布施

があります。笑顔を向けたり、優しい言葉をかけたり、席を譲ったり

という、ほんのちょっとしたことでもそれは立派な布施と呼ばれ、

その功徳は計り知れないものがあるとお釈迦様は言われています。

お経に「利他を先とせば、自らが利省かれぬべしと、しかには

非ざるなり、利行は一法なり、遍く自他を利する也。」とあります。

他の人を優先させると自分が損をしてしまうということはありません。

利他行は自分も相手もみんなを良い方向に導く大きな力があると

いわれています。

このこと、具体的なことでお話しますと、

例えば、人通りのはげしい道のある一か所大変汚れている所

があったとします。

そこを近くの人が掃除をしてくれました。ごみを全部かたずけ

、汚れをきれいに水で洗い流し、きれいさっぱり掃除をしてくれました。

この時、掃除をした人はその場所を見て清々しい、爽やかな思い

になります。場所を掃除したことによって、掃除した人の心の中も

清掃し、清めることができたということでもあります。

そしてそこを通る、何十人、何百人の人達は今までは通るたび

心を曇らせていましたが、これからは、清々しい、爽やかな思いで

以って通り過ぎることができるようになりました。

たった一つの場所を掃除したことによって、何十人、何百人の心の中

まで清めることが できたということでもあります。

この布施ということ 不思議な力があります。たとえば1つのものを

百人のひとに分けたとしますと、一人の人には百分の一の大きさ

になってしまいますが、ちょうど蠟燭の炎を百本の蠟燭に

移しましても、もとの蝋燭も百本の蝋燭も同じ大きさの炎が行き渡り

ますように、不思議な力があります。

布施と殊更いわなくても、どなたも普段の生活の中で周りの人を

気遣い、思いやりながら自ずと布施を行っていることと思いますが、

お釈迦様が布施を特に強調され、お勧めになったということ思い出

していただき、少し意識して心がけて頂ければと思います。

そうすることによってご自身から良い方向、良い流れを

作って行って頂ければと思います。