闇の夜に・・


闇の夜に鳴かぬ烏の声聞けば生まれぬ先の父母ぞこいしき 

という歌があります。

一休さんの作ともいわれています。

歌の意味は、正解というものはなく、

読み手によって様々な解釈、味わい方があるのだと思います。

わたしは以下のように思います。

「生まれぬ先の父母ぞこいしき」は

生まれる前の父母ですから実際の両親のことではなく、

自分を生み出した、この世に在らしめてくれた

もの、働き、力、神、仏、法・・・

そのようなものが、恋しい、愛おしいという意味かと思います。

「闇の夜に鳴かぬ烏の声聞けば」 

闇の夜に黒い烏ですから、見えません。あるようで無い。

鳴かぬ烏の声ですから、聞こえません。あるようで無い。

生まれぬ先の父母、あるようで無い。

(生まれてから父母になりますから。)

実際の父母以前に、自分を、すべてを存在せしめている

大きな働きを「生まれぬ先の父母」と表現するための

 「闇の夜に鳴かぬ烏の声聞けば」 は「あるようで無い」

で揃えた前置きみたいな意味になると思います。 

そしてもう一つ意味があると思います。

闇の夜に黒い烏、鳴かぬ烏の声、生まれぬ先の父母、

「あるようで無い」とは、仏教でいう存在の様子です。

現象として顕れたものは、あるようで空性のもの、

あるようでない、幻。そうゆうこの世の在り方、

絶対的な様子が、恋しい、愛おしい。面白い。素敵だな。

そうゆう意味の歌でもあるように思います。

幻、空相、空性・・・というとどこか寂しい感じがするかも

しれませんが、その真逆の意味もあります。

その人が、心が、すべてを創り出している。創造しているという面です。

三界唯一心、三界唯心造に相当します。 

創り出したものが、どんどん消滅していくということ、

それが無常ということです。